第一級総合無線通信士(1総通)受験体験記


第一級総合無線通信士を取得しましたので、忘れないうちに受験日記を書いておきます。

この資格について

 無線従事者の国家資格の一つです。無線設備の通信操作を行う資格では、最上位の資格となっています。
 モールスの送信・受信の実技があるので、比較的難易度の高い資格となっています。

 この資格で可能な操作範囲は以下のとおりです。(電波法施行令)

 第一級総合無線通信士
 一 無線設備の通信操作
 二 船舶及び航空機に施設する無線設備の技術操作
 三 前号に掲げる操作以外の操作で第二級陸上無線技術士の操作の範囲に属するもの

 また、第二陸上無線技術士の操作範囲は
 次に掲げる無線設備の技術操作
 一 空中線電力二キロワット以下の無線設備(テレビジョン基幹放送局の無線設備を除く。)
 二 テレビジョン基幹放送局の空中線電力五百ワット以下の無線設備
 三 レーダーで第一号に掲げるもの以外のもの
 四 第一号及び前号に掲げる無線設備以外の無線航行局の無線設備で九百六十メガヘルツ以上の周波数の電波を使用するもの
 です。

 結局、第一級総合無線通信士の操作範囲は、
  ・通信操作すべて
  ・船と飛行機の技術操作すべて
  ・第2級陸上無線技術士の操作範囲
 となっています。

 昔であれば、外国航路の船舶や、海岸局の通信士として重宝された資格ですが、
 今では、現在は衛星通信等の充実、機器の高信頼化、二重化等によって、無線通信
 士が必要な職場は少なくなったようです。

 受験する必要のある科目は、
 無線工学の基礎、無線工学A、無線工学B、法規、地理、英語、電気通信術
 です。
 この資格の難易度が高いのは電気通信術があるためです。
 電気通信術の試験内容は、モールス電信、直接印字電信、電話と3科目あります。
 モールス電信が一番難易度が高いです。他2つは少し練習していればいいのですが、
 モールス電信だけは、相当?の練習が必要です。1分間に75字の和文、1分間に80文字の
 英文のランダム文(暗語)、1分間に100時の英文の普通文、それぞれ送信と受信が5分ずつ、モールスだけで合計30分間の試験です。

 とうことで、年間の受験者数は173人、合格者19人(総務省HPより。平成22年度)
 平成23年9月の試験は、受験者数96人、合格者5人(雑誌「電波受験界」より)
 ということで、受験者、合格者ともに非常に少ない国家試験となっています。

試験時期

 今のところ年間2回実施されています。

私の受験歴

 平成5年 第1級アマチュア無線技士 合格(欧文和文ともにモールスの試験があった時代です)
 平成13年 第1級陸上無線技術士 合格
 平成14年 第1級海上無線通信士 合格
 平成23年8月 国内電信級特殊無線技士 不合格   
 平成23年9月 1総通 地理、英語、法規 合格
        電気通信術不合格
        1陸技を所持しているので、無線工学の基礎、無線工学A・無線工学Bは免除
10月と2月 国内電信級特殊無線技士 受験申請はしたけど、仕事のため受験できず。
 平成24年3月  1総通 電気通信術合格 免許取得

受験のきっかけ
 中学生の時からアマチュア無線を趣味にしていると、無線界の最上位資格 1総通、1陸技の両方の取得ははあこがれ、夢でありました。
 大学生になり、1陸技はなんとか取得、その後も1海通までは取得しましたが、
 1総通は夢のままとなっていました。
 平成22年の年末のある日、インターネットで「A1ABreaker」というモールス練習ソフトを見つけ試してみると、10年くらいモールスは聞いていないにもかかわらず、あまり忘れずに聞き取れることに気づきました。これはいけるかも?と漠然と練習を始めることにしました。

使用した参考書と勉強方法(平成23年9月の試験について)

 ・地理(合格)
 10年分の過去問題を解答しながら、高校の地理の地図帳をコピーしたものに出題された地名を記載して、学習しました。

 ・英語(合格)
 試験勉強なし。特に対策してませんでした。
 
 ・法規(合格)
 過去問題を3年分学習しました。

 ・電気通信術
 直接印字電信 キーボードタイピングの試験です。パソコンの画面に出ている文字を入力します。特に勉強なし。
 無線通話 試験会場に行く電車の中であわてて通話表を見ている状況でした。
      ただし、試験に行って、和文の試験はなくなった事に気づいたのでした。
    「A」だと「あるふぁ」「B」だと「ブラボー」など欧文通話表で定められています。
      試験では、紙にABCDEと書いてあれば、「あるふぁ・ぶらぼー・ちゃーりー・でるた・エコー」と試験管の前で話す送話と、その逆のスピーカーから流れてくる「あるふぁ・ぶらぼー」と聞こえたら「AB」と書き取る受話の試験があります。アマチュア無線経験者ならば、試験対策は特に不要かなと思います。
  あさひのあ いろはのい の和文通話表は国家試験ではいつのまにかなくなったようです。昔海上通信士の試験ではあった気がするんだけど。
      

 ●モールス受信 
 旧1アマは持っていたので、和文欧文ともに、モールス信号は知ってはいますが、1総通の試験速度に対応するために練習が必要になりました。
 ・電気通信振興会のCDを聞きながら、電気通信振興会の受信用紙に書いて練習
 ・さらに、1回受験した後は、試験のときに頂いた受信用紙を印刷屋で1000枚赤で
  印刷した紙で受信練習していました(結局大量にあまってしまいました。)
 ・バスの中などでは、mp3プレーヤーに記録したCDの内容を聞く
 ・ハムフェアで購入した、電通大無線部が作成したモールス練習用CD
  (少し形式が違うので、次回は改訂を期待しています>電通大無線部様)
 ・CDの内容は覚えてしまうので、フリーソフトのa1abreakerを併用して練習
 ・気が向いたときにファミレスやマクドナルド等でCDの内容を聞きながら書き取り練習を行いました。
  英文は、1回目の受験では小文字筆記体で書きましたが、2回目の試験は小文字ブロック体で合格できました。
  筆記用具としていろいろと試しましたが、2Bの鉛筆を使うことにしました。個人差が大きいと思いますので、いろいろと実験して書きやすいもの、文字が誤りなく見えるものを選んでください。鉛筆がすり減ってくると書きづらくなるので、こまめに鉛筆は削りましょう。

 ●モールス送信
  ・使用設備
   ・エレキーのパドル BENCHARのJA-2(約15年前にアマチュア無線で使用するため購入したもの)
   ・エレキー サーキットハウス社のキット
    以上2点を国家試験に持ち込みました。

   ・低周波発信機 EKM-2B(国家試験で使用されているものと同じものを購入しました。)
   ・ヘッドホン
    以上2点は練習に使用しました。
    
国家試験の機器構成は↓です。
                               ヘッドホン(受験者)
                                    |
パドル(持参)−エレキー(持参)−−<(みの口クリップ)電鍵(試験会場)−−低周波発信機−−カセットテープ−−試験官のヘッドホン



練習での機器構成は↓です。

低周波発信機   エレキー   パドル
電気通信術の国家試験では、エレキーからの出力(みの口)を、
低周波発信機の代わりに、試験会場に設置されている電鍵に接続します。
 
受験日記

H23.9 東京
 東京の晴海の会場でした。 
 通信術の試験は約30人が来ていました。
 まわりをみていると、縦ぶれの方がほとんどで、エレキーの方は少なかったです。
 まず、モールス受信。スピードはあまり速くないので、十分聞き取れるはずのスピードですが、部屋の反響が非常にひどかったです。そのため、誤字脱字が多かったと思います。
 送信は、欧文暗語は最後まで打ち終えたのですが、他の2種目はぜんぜん時間が足りずに、かなり未送信となってしまいました。

結果
 地理、法規、英語の科目合格
 さらに、得点開示請求を行い、これからの対策の参考にしました。
 
検討
●モールス受信
・欧文は、小文字筆記体で書いていましたが、おそらく誤字脱字不鮮明な文字が非常に多くなっていると思い、小文字ブロック体に変更することにしました。ただし、試験会場の反響(エコー)の影響は練習してもどうなることやらでした。

●モールス送信
練習あるのみですが、結局本格的に練習始めたのは試験1ヶ月前。
1日試験1回分を目安に練習していました。
モールス送信速度
ゆっくりめに打ってノーミスを狙うか、
早めに打って、訂正を入れても時間内の終了を狙うか迷うところですが、
スピードを変えて練習したところ、スピードを早くしてもミス頻度があまり
変わらないので、
和文 1分に90字程度?、欧文 1分に115字程度?の速度で送信することに
しました。試験では訂正は多かったですが、無事時間内に終了することとができました。


H24.3 某地方都市
残り1科目。電気通信術のみ。
気持ちを入れ替えて、別の場所で受験してみることにしました。場所を変えると、東京よりも環境がいいかもしれません。
とうことで、はるばる?来てみました。
試験日は工学の基礎と同じ日でした。工学の基礎の受験者いないのかなと
思ったら、受験者は私一人でした。
私一人のために、試験官3名。とても豪華?です。
1人はモールス担当、1人は直接印字電信担当、一人は送話受話担当だったと思います。

●モールス受信
東京では受験者約30人、部屋の周囲のスピーカー数個から同時にモールスが流れてきますが、ここでは受験者私一人、ラジカセ(Panasonic RX-MDX63)から流れるモールスを真っ正面で、自分の聞きやすい音量で聞くことができました。練習の成果が出ているのか、モールスはゆっくり聞こえました。しかし、欧文も和文も5分間の試験の終わり近くになると、手がカチカチになって書きづらくなります。ふだん受信の練習をしているときは、30分くらい連続で書いていても平気なのですが、試験ではていねいに書こうとしているのが影響しているのかもしれません。
 3種目とも、電文は2通 枚数は和文は5〜6枚、欧文は小さめの文字で書けば2電文1枚ずつでした。
 私一人だけなので、他の人が書いている音が気になるわけでもなく、紙をめくる音が気になるわけでもなく、非常にいい環境で受験できました。交差点のピッポピッポという音がするので、気になるかと心配していましたが、試験中は集中していると、交差点の音は聞こえません。

●受話
今では欧文のみです。和文は試験からはなくなりました。
5文字×1枚弱くらいの分量です。 ブロック体大文字で記入しました。

●直接印字電信
画面に表示される英文を入力しますが、制限5分で、約250文字入力します。
たぶん1分少々で入力したと思います。

●モールス送信
 今回もエレキーとキーヤーを持ち込みです。設置された縦ぶれ電鍵にワニ口クリップで接続します。
 東京の試験会場のように、他の人がこつこつと縦ぶれ電鍵を打っている音が気になるわけでもなく、非常にリラックスして気分よく試験を受けることができました。
 送信速度はかなり速めに設定しているので、ミスも多いのですが、3種別ともに、どうにか時間内に送信ができました。
開始から約1時間30分で試験は終了しました。
そこで一言、
「HとSの混同があるねぇ」
え〜っ
ミスが少なければいいんだけど...


そして、試験から約1ヵ月後、
「合格」の文字が書かれた無線従事者国家試験通知書を受け取り、
約2ヵ月後に第1級総合無線通信士の免許を入手しました。
小さいころからの夢・あこがれが1つ達成できました。




構成が悪い気もするけど、とりあえず公開24.6.16 tableで囲みました。写真1枚追加しました。24.7.29 前のページへ
  
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